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『ハッピーフィート』、ラティーノ、そして黒い大西洋

映画『ハッピーフィート』を観ました。CGのペンギンが歌って踊るあれね。春休みの子どもたちを当て込んで公開中。え、なんでそんなもんに行ったのだ?いや、あの、たまには相方とデートしようということになりまして。ま、ま、そんな事情はさておき。

意外にも、ヒップホップの浸透までを射程に入れたアメリカ文化史のおもむき。

「歌を唄うのが一人前のペンギン」という世界で、歌がへたくそでダンスが好きな主人公マンブル。その成長の軌跡は、アメリカ社会でヒップホップがのしてくるのを彷彿とさせます。

味噌は、最初はこけにされたマンブルがスペイン語なまりの英語を話す別のペンギン・グループとの交流を通じて自分への信頼を取り戻すところ。行くなら絶対に字幕版で観て下さい(吹き替え版だと、大きな笑いどころをきっといくつも逃します)。ペンギン諸族の割り振りから透けて見えるのは、アメリカ社会の複雑な民族構成。なかでも、ラティーノの存在感が圧倒的なのです。

黒人を抜いてラティーノが最大のマイノリティとなった最近の事情を反映しているばかりではありません。ヒップホップというと黒人の印象が強いかもしれませんが、その草創期に決定的な影響を与えたのはたとえばカリブ地域からニューヨークへとやってきていたスペイン語系の人々でした。そしてそれは元をたどれば、ハーレム・ルネサンスの二十世紀初頭はおろか、十九世紀、そしてそれ以前から連綿と続いていたブラック・アトランティック世界へといたるパターンなのです。

映画のエンディング自体はちょっと未完成な感じですし、ラティーノやブードゥーとおぼしきキャラクターにみられるステレオタイプなどコワイところも満載ですが、アメリカ社会の自己像が広がりつつあるのを感じさせる一品でした。もう一歩ふみだせば、ぐんと大胆なトランスナショナル・アニメが出来そうです。耳を澄ませて楽しんで下さい。

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コメント

お、土屋さん。元気そうで何より。ルームメイトにはいやがられましたか。あはは、申し訳ない。でもカリブ研究をかじった人には見所満載だったはず。ブードゥーを思わせるシャーマンが伝統的と言うより実は「遭遇」以後の産物だったりして、そんなに身も蓋もなく言っていいのかと心配になるくらい。ラティーノ・ペンギンはもちろん小柄で、しかも声優がロビン・ウィリアムスと来てはこれまたミンストレル・ショーかいな。よくぞバッシングにあわなかったものです。

投稿: 松原 | 2007/04/23 21:52

松原さんの投稿が気になり、先日、Happy Feet見てみました。確かに松原さんの指摘されているように、ラティーノの存在や、ヒップホップの浸透など、なるほど、と思わされて、面白かったです。

ルームメイトには、「これはペンギンかわいい~☆って言いながら見る映画なんだから、そんな見方はいやだ~」と言われてしまいましたけど。

ラティーノのペンギンがふた回りほどサイズが小さい、別種のペンギンであったのは、ちょっと引っかかりを覚えましたが、こんなノリでこんな話し方をする子達、いるなぁ!と、笑えました。

タップやヒップホップの遍歴については、やはり勉強不足なのですが、マンボ(主人公)のタップ部分を担当していたのが、年季の入ったドレッドヘアのブラックの方だったのも、面白かったです。

投稿: 土屋 | 2007/04/20 23:40

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